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「親から相続した土地が借地だった」「契約期間の満了が近づいてきた」などの理由で、地主さんへ土地を返すことを考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、借地を返すときには「上に建っている家はどうすればいいの?」「解体費用は誰が払うの?」「お金はもらえるの?」など、たくさんの疑問や不安がつきものです。
特に、不動産の専門知識がないと、何から手をつければ良いのか分からず、地主さんとのトラブルに発展しないか心配になりますよね。
この記事では、そんなお悩みを持つあなたのために、借地を返還する際の基本ルールから、具体的な手続き、費用、税金の問題、よくあるトラブルの対処法まで、専門家が分かりやすく解説します。
最後まで読めば、借地返還の流れが明確になり、安心して手続きを進められるようになります。
借地返還の基本原則「更地返還」とは
借地を返すとき、まず知っておくべき大原則が「更地(さらち)にして返す」ということです。これを更地返還の原則といいます。なぜ更地にしなければならないのか、その理由と注意点を見ていきましょう。
借地契約における原状回復義務
賃貸アパートを退去するときに、部屋を借りたときの状態に戻して返す「原状回復義務」があるのと同じように、土地の賃貸借契約である借地契約にも原状回復義務があります。
借地契約における原状回復とは、土地の上に建てた建物などをすべて撤去し、何もないまっさらな状態(更地)にして地主に返還することを指します。これが、借地返還の基本的な考え方です。
建物解体義務が発生するケース
上記の原状回復義務に基づき、借地契約が期間満了などで終了した場合、原則として借地人(あなた)に建物の解体義務が発生します。
つまり、自分の費用で建物を解体し、更地にしてから地主に土地を返さなければなりません。これは法律で定められた借地人の義務であり、地主から解体を求められた場合は基本的に断ることができません。
契約書に特約がないか事前に確認
ただし、すべてのケースで解体が必要なわけではありません。借地契約書の中に「建物を解体せずに明け渡す」といった特約が記載されている場合があります。
このような特約がある場合は、契約書の内容が優先されるため、建物を解体する必要はありません。借地返還を考え始めたら、まずは手元にある借地契約書を隅々まで確認することが非常に重要です。もし契約書を紛失してしまった場合は、地主や管理している不動産会社に連絡して写しをもらえないか相談してみましょう。
更地にしない選択肢「建物買取請求権」
「更地にして返すのが原則なのは分かったけど、まだ使える建物を壊すのはもったいない…」と感じる方も多いでしょう。実は、一定の条件を満たせば、建物を解体せずに地主に時価で買い取ってもらう「建物買取請求権」という権利を行使できます。
これは借地人を保護するための非常に強力な権利ですので、ぜひ知っておきましょう。
建物買取請求権が使える条件
建物買取請求権は、いつでも使えるわけではありません。以下の条件を満たしている必要があります。
- 借地契約が更新されずに期間満了で終了すること
債務不履行(地代の滞納など)が理由で契約解除された場合は、この権利は使えません。 - 借地の上に建物が存在していること
建物が登記されているかどうかは関係なく、現に建物が存在していれば対象となります。
この権利は「形成権」と呼ばれる非常に強い権利で、借地人が地主に対して「建物を買い取ってください」と意思表示をした時点で、地主の承諾がなくても売買契約が成立します。地主は正当な理由なくこれを拒否することはできません。
請求権を行使する際の手続き
建物買取請求権を行使する際は、後々のトラブルを避けるためにも、口頭ではなく書面で意思表示をすることが重要です。
「いつ、誰が、誰に対して、建物買取請求権を行使したか」を証明できる内容証明郵便を利用するのが最も確実な方法です。意思表示をした後は、地主と具体的な買取価格について交渉を進めていくことになります。
建物の買取価格の相場と算定方法
気になる買取価格ですが、これは「時価」で算定されます。この「時価」には、以下の2つの要素が含まれます。
- 建物自体の価値
建物の再調達価格から、経年劣化による価値の減少分(減価償却)を差し引いて計算されます。 - 場所的利益
その建物がその場所にあることで得られる利益(例:駅近、商業地域など)も価格に上乗せされます。
当事者間での話し合いで価格が決まらない場合は、不動産鑑定士に鑑定を依頼したり、最終的には裁判所の判断を仰いだりすることになります。
借地返還で発生する費用と相場
借地を返還する際には、特に建物を解体する場合にまとまった費用が発生します。ここでは、どのような費用が、いくらくらいかかるのかを解説します。
建物の解体費用相場と見積もり取得
建物の解体費用は、建物の構造や大きさ、立地条件(重機が入りやすいかなど)によって大きく変動します。一般的な目安は以下の通りです。
- 木造
坪3万円~5万円程度 - 鉄骨造
坪4万円~7万円程度 - 鉄筋コンクリート造(RC造)
坪6万円~8万円程度
例えば、30坪の木造住宅であれば、90万円~150万円が費用の目安となります。ただし、これはあくまで目安です。必ず複数の解体業者から見積もりを取得し、費用と内容を比較検討するようにしましょう。
解体費用は誰が負担するのか
更地返還が原則であるため、建物の解体費用は、原則として建物所有者である借地人が全額負担します。
ただし、地主側にも「早く土地を返してほしい」などの事情がある場合は、交渉次第で地主が費用の一部を負担してくれるケースもあります。諦めずに、まずは地主と話し合ってみることが大切です。
解体費用が払えない場合の対処法
「解体費用が高額で、とても払えそうにない…」という場合でも、いくつかの対処法があります。
- 解体ローンの利用
金融機関によっては、解体工事専用のローンを取り扱っています。担保や保証人が不要な場合も多いので、相談してみましょう。 - 自治体の補助金制度の確認
空き家対策などの一環で、建物の解体費用の一部を補助してくれる自治体があります。お住まいの市区町村のウェブサイトなどで確認してみてください。 - 借地権の売却を検討する
解体して返還するのではなく、「借地権」として第三者に売却するという選択肢もあります。売却できれば解体費用がかからないだけでなく、まとまった資金を手にすることも可能です。ただし、売却には地主の承諾が必要になります。
権利金・保証金は返還されるのか
借地契約時に「権利金」や「保証金」を支払っている場合がありますが、これらが返還されるかどうかは契約内容によります。
- 権利金
借地権を設定する対価として支払うお金であり、返還されないのが一般的です。 - 保証金
地代の滞納などに備えて預けておくお金です。特に問題がなければ、契約終了時に返還されることが多いですが、契約書の内容を必ず確認してください。
借地返還の具体的な手続きと流れ
借地返還をスムーズに進めるためには、正しい手順を踏むことが重要です。ここでは、一般的な手続きの流れを4つのステップで解説します。
ステップ1:地主への意思表示と交渉
まずは地主に対して、借地を返還したいという意思を伝えます。契約期間満了が近い場合は、そのタイミングで伝えるのが良いでしょう。
このとき、以下の点について地主と話し合います。
- 更地で返すのか、建物を残したまま返すのか
- 建物買取請求権を行使するかどうか
- 返還の具体的な時期
ここでの話し合いが、今後の手続きの土台となります。
ステップ2:返還に関する合意書の作成
地主との間で返還条件がまとまったら、必ず「合意書」や「覚書」といった書面を作成しましょう。口約束だけでは、後から「言った」「言わない」のトラブルに発展する可能性があります。
合意書には、以下の内容を明記します。
- 土地の返還日
- 更地で返すか、建物付きで返すか
- 建物買取請求権を行使する場合の買取価格
- 解体する場合の費用負担の割合
- その他、双方が合意した事項
ステップ3:建物の解体または引き渡し
合意書の内容に従って、建物の処理を進めます。
- 更地返還の場合
解体業者に依頼して建物を解体し、廃材などをすべて撤去します。 - 建物買取の場合
建物の鍵などを地主に引き渡します。
ステップ4:土地の明け渡しと登記手続き
土地を更地にするか、建物を引き渡したら、地主に土地を明け渡します。
もし、借地権の「設定登記」がされている場合は、法務局でその登記を抹消する手続き(抹消登記)が必要です。この手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。すべての手続きが完了したら、借地返還は終了となります。
無償返還時に注意すべき税金の問題
借地を無償で、つまりお金のやり取りなしに返す場合、税金の問題に注意が必要です。特に「土地の無償返還に関する届出書」を提出しているかどうかで、課税関係が大きく変わります。
「土地の無償返還に関する届出書」とは
「土地の無償返還に関する届出書」とは、将来、借地人が地主へ土地を無償で返すことを約束する代わりに、地主が借地人から権利金などを受け取っても、その権利金に課税されないようにするための書類です。
この届出書は、借地契約時に借地人と地主が連名で税務署に提出します。この届出がされている場合、実際に土地を無償で返還しても、原則として地主にも借地人にも贈与税などの税金はかかりません。
(参考:国税庁「No.5730 借地権の無償返還に関する届出」)
届出書がない場合の贈与税リスク
もし「土地の無償返還に関する届出書」を提出していない場合、借地を無償で返還すると、借地権という財産価値のある権利が借地人から地主へ無償で譲渡された(贈与された)とみなされる可能性があります。
この場合、地主側に高額な贈与税が課せられるリスクがあります。地主が予期せぬ課税を避けるために、借地権の買い取りを主張してくるなど、トラブルの原因になりかねません。
法人が地主の場合の受贈益課税
地主が個人の場合は贈与税の問題となりますが、地主が法人の場合は、無償で借地権の返還を受けると「受贈益」として法人の利益とみなされ、法人税の課税対象となります。
この場合も、「土地の無償返還に関する届出書」を提出していれば、原則として課税されることはありません。
借地返還でよくあるトラブルと対処法
借地返還は、地主と借地人の利害が対立しやすく、残念ながらトラブルに発展することも少なくありません。ここでは、よくあるトラブル事例とその対処法をご紹介します。
地主が建物買取に応じてくれない
「建物買取請求権を行使したのに、地主が買い取りを拒否する」というケースです。
前述の通り、建物買取請求権は借地人の一方的な意思表示で成立する強力な権利です。地主は正当な理由なく拒否できません。もし地主が応じない場合は、この権利が法的に認められたものであることを冷静に説明し、交渉を続けましょう。それでも話が進まなければ、弁護士に相談することをおすすめします。
解体費用の負担で揉めるケース
「解体費用は地主が払うべきだ」「いや、借地人が払うのが当然だ」といった費用負担に関するトラブルです。
原則は借地人負担ですが、契約内容や交渉次第で変わる可能性もあります。まずは契約書を確認し、お互いの主張の根拠を明確にすることが重要です。感情的にならず、なぜそのように考えるのかを論理的に話し合うことが解決の糸口になります。
高額な立退料を要求された場合
これは少し特殊なケースですが、借地人が「土地を返すなら立退料を払ってほしい」と要求する、あるいは地主が「立退料を払うから出て行ってくれ」と要求する場合があります。
契約期間満了による返還の場合、借地人から地主へ立退料を請求する権利は基本的にありません。逆に、地主側の都合で契約期間の途中に立ち退きを求める場合は、地主が借地人へ立退料を支払うのが一般的です。
困ったときは弁護士など専門家へ相談
当事者同士での話し合いがこじれてしまい、解決が難しいと感じたときは、一人で抱え込まずに専門家に相談することが最善の策です。
借地権の問題は法律や税金が複雑に絡み合うため、不動産問題に強い弁護士や、借地権の取引に詳しい不動産会社に相談することで、法的な観点から的確なアドバイスをもらえます。早期に相談することで、トラブルの深刻化を防ぐことにも繋がります。
まとめ
今回は、借地の返還について、基本原則から手続き、費用、トラブル対処法まで詳しく解説しました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
- 借地返還の原則は「更地返還」
契約書に特約がない限り、借地人は自分の費用で建物を解体し、更地にして返す義務があります。 - 「建物買取請求権」という選択肢もある
条件を満たせば、建物を解体せず地主に時価で買い取ってもらうことが可能です。 - 費用と手続きを事前に把握しておく
解体費用や税金、返還までの流れを理解しておくことで、計画的に準備を進められます。 - トラブル防止には「書面」と「対話」が重要
地主との合意内容は必ず書面に残し、日頃から良好な関係を築いておくことが大切です。 - 困ったら専門家に相談する
自分たちだけで解決できない問題は、弁護士などの専門家の力を借りましょう。
借地の返還は、人生で何度も経験することではありません。だからこそ、正しい知識を身につけ、一つひとつのステップを丁寧に進めていくことが、地主との円満な関係を保ちながら、スムーズに手続きを終えるための鍵となります。この記事が、あなたの不安を解消する一助となれば幸いです。
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